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2007年9月 8日 (土)

鳶がクルリと

「鳶がクルリと」 ヒキタクニオ

鳶がクルリと 鳶がクルリと
(2002/01)
ヒキタ クニオ

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超優良企業の総合職としてバリバリだった中野貴奈子は上司のひと言に魂を抜かれ、辞表を提出。
プーの生活から再就職したのは鳶職人の集合体、その名も「日本晴れ」だった。
俗世間からずれまくった異能の職人達が挑んだのは、難易度特Aクラスの巨大な現代彫刻の取り付けと会社のユートピアの創造だった…。
ひねりのきいた笑いと、でっかい感動が炸裂!
ひたすら面白い娯楽小説の新潮流。

またまた、アラスカさんからご紹介いただきました。

 ・・・ なんて 甘美な響き・・・。
ツボ です。

これまでのヒキタ作品の中で、一番ライト、楽しい作品でした。

ここに出て来る鳶集団 <株式会社 日本晴れ> の面々が、とっても魅力的だ。
何と言っても、鳶頭(”かしら” と読む) キナコの叔父、勇介。
なんと、全共闘あがり の鳶ですよ!!
ただ、 <鳶> というだけで、十分ステキなのに。 
実にヒキタクニオらしいバックグラウンドの味付け。 <鳶> に、奥行と深みが出る。
学者一家の家系で、その末弟の勇介は、学生運動の末、勘当され鳶になった。
(おそらく日本の最高学府中退であろう)

キャ~! そんな鳶がいてもいいのか!? ステキ だ・・・。
これだけで、すっかりヤラれちまいました。

しかし、何と言っても私の心を捕らえたのは、ものごとを高校の偏差値にたとえる 剛。

― 剛の価値観の尺度は偏差値なんだよ。 戦争を体験した人間が、兵隊の階級に置き換えた言い方をよくするだろう。あれと同じなんだろうな。
どこどこの会社の課長と聞くと、兵隊で言うと、伍長くらいのかんじだ、とか。
で、剛、今日はどれくらいの気分なんだ。

― そうだな。私立武蔵高校ぐらいの気分だよ。 男子校御三家だぜ。
それくらい気分がいいってことなんだぜ。

この剛の感性は、[裸の大将] 山下清 の決まり文句
「へ、兵隊の位で、い、いうと、ど、どれくらいなのかな」

と通ずるのだろうか?

最初はなんだかついていけなかったけど、だんだんツボにはまって来て、剛が言うこといちいちおかしくて、爆笑です。

― 剛さん、ガラス割ったこと、本当にごめんなさい。
― いやあ、いいんだよ、貴奈子さん。 あのガラスも偏差値七十以上の人間に割られたんなら本望だったと思うぜ。
理解に苦しむ剛のなぐさめに、貴奈子は返事のしようがなかった。

(貴奈子は、桜蔭 → お茶大 なので、それだけで剛は、貴奈子のことをソンケーしてしまうのです)
同様に、鳶頭は、「日本で一番偏差値の高かった頃の日比谷高校」なので、大ソンケー。 これが、高校で、「偏差値」 というワケのわからんモノだからいいんだよね。
こだわりが、「大学」 だと、しゃれになんないよ。 その辺はさすがヒキタだ。

これ、読んでいて、 <人間の品性> について考えてしまった。
かつて、勇介の父(もちろん、学者)が、鳶を "BLUE COLOR" と蔑んで言った時、勇介が自分の父を心底恥ずかしいと思った事。
そういう <感性> は、姪の貴奈子にも確かにあるのだ。

この 「株式会社 日本晴れ」 の人々が、 <品格> があるのは、己の仕事に誇りを持っているからだ。 職能集団でいたい、という心意気。
「会社の発展」なんてことに背を向けて生きて行きたい。そんな会社があってもいいだろう?
それって、易しいことじゃない。 だからカッコイイ。

最後に、ドイツ人芸術家 ブリックさんがやる <粋なこと> に思わず目頭・・・。
結局また泣かされてしまったヒキタ作品・・・。

ところで、この話、ヒキタ作品ではじめて、ヤクザもおカマも 出て来なかった。
どこに出て来るか、わくわくして読んだのに・・・。
(唯一、これからヤクザになるという、全共闘の同志はいたけど)

この話も映画化されております。

鳶がクルリと 鳶がクルリと
(2006/03/21)
観月ありさ、哀川翔 他

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監督は、ヒキタ作品「凶気の桜」の薗田賢次。
しかし、このキャスティングを見て、ハゲ萎え・・・。
貴奈子が観月ありさ?
貴奈子というキャラクターは、

― 「これはまた、賢そうな顔をした娘さんだな」
貴奈子は、又か、という思いだった。 子供の頃からいつも、「賢そうなお嬢さん」 と言われ続けて来た。 どうせお世辞を言うなら、綺麗だとか可愛いとか言って欲しい。

というお嬢さんなのだ。
観月ありさは、その反対にいる人だと思う。 (子供の頃から、「綺麗だとか可愛い」と言われ続けて来たお嬢さんじゃねえか)
ま、映画は原作とは違う話になっているみたいだからな。とやかく言うのはやめとこ。
にしても、貴奈子が好きになる悦治が、哀川翔って・・・。
いえ、翔さんはいい役者ですけど・・・。

― おい、雷風太、おまえらの行った 阿佐北工業の二倍の偏差値があるんだぞ。 おまえら二人の偏差値を足して、ちょうど貴奈子さんの偏差値だ。  偏差値が二倍なんて人に会えるのはそうそうないんだからな。  いやあ、すごい、貴奈子さんはすごいねえ。

いいなあ、剛はさ。
(映画では、須藤元気、合ってる! ぴったり!)
その他の キャスティングについては、 公式HP へどうぞ。    

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